4デザインの価値を考える
岡村正昭先生
(以下敬称略)
(以下敬称略)
不二家の「ルックチョコレート」やクラッカーの「リッツ」などのパッケージデザインを手がけたレイモンド・ローウィさんというデザイナーは、10人が10人見ても「嫌いじゃない」というデザインを作ることに尽力しました。
その結果、デザインに価値を生み出すことに成功しました。
その結果、デザインに価値を生み出すことに成功しました。
長尾
「嫌いじゃないデザイン」ですか。
岡村
デザインの価値というのは何なのか。例えば、売れることやクレームが減ることが目的だとします。
目的を達成するために若者にウケるデザインをつくる。
しかし、購買層をしっかり分析したら、実は購入層の半数以上が高齢者だったなんてことはよくある話です。
目的を達成するために若者にウケるデザインをつくる。
しかし、購買層をしっかり分析したら、実は購入層の半数以上が高齢者だったなんてことはよくある話です。
長尾
先ほどのお話にも出ましたが、高齢者向けのデザインとなると
「お年寄りでも分かりやすく文字を大きく」というのがデザインの基礎のように一般的には考えられています。
「お年寄りでも分かりやすく文字を大きく」というのがデザインの基礎のように一般的には考えられています。
岡村
そうですね。それは仕方のないことです。
でも実はそれだけではないことにHiRASAWAさんが気づかせてあげるような提案をしていけばいいわけです。
先ほどの白内障体験ゴーグルでも検証しましたね。
文字の大きさについては、読みたいと思うモチベーションがあれば、多少の読みづらさを超えて、読んでいます。
新聞や文庫本の活字の大きさは劇的に変化していませんよね。
でも実はそれだけではないことにHiRASAWAさんが気づかせてあげるような提案をしていけばいいわけです。
先ほどの白内障体験ゴーグルでも検証しましたね。
文字の大きさについては、読みたいと思うモチベーションがあれば、多少の読みづらさを超えて、読んでいます。
新聞や文庫本の活字の大きさは劇的に変化していませんよね。
長尾
虫眼鏡を使ってでも新聞を読みたければ読みますよね。
岡村
そうです。飲食店でも、読みたいと思うメニューは、読みづらさがあっても必死で読みます。
長尾
必死で読むメニューというものがあって良いのでしょうか?
岡村
良い場合もあると思います。
例えば、ハンバーグ専門店と大きく掲げているお店で、その種類が100種類くらいあった時はどうでしょうか。
わざわざ専門店に入ったわけですから、家では味わえないような、いつもと違うハンバーグが食べたいと思う人もいるでしょう。
メニューを必死で読み込もうとしますよね。このようなお店の場合には、デザインを損なうほどの大きなメニュー名よりも、種類の違いや特徴がわかることの方が重要かもしれないので、そういう提案もありだと思います。
例えば、ハンバーグ専門店と大きく掲げているお店で、その種類が100種類くらいあった時はどうでしょうか。
わざわざ専門店に入ったわけですから、家では味わえないような、いつもと違うハンバーグが食べたいと思う人もいるでしょう。
メニューを必死で読み込もうとしますよね。このようなお店の場合には、デザインを損なうほどの大きなメニュー名よりも、種類の違いや特徴がわかることの方が重要かもしれないので、そういう提案もありだと思います。
長尾
お店それぞれの提案は大事ですね。文字は小さいより大きい方が良いかもしれないですがデザインのことを考えると弊害も同時に生まれこともあります。
岡村
文字を大きくしたことで逆にクレームが出てしまった事例もあります。
長尾
文字が大きくてクレームですか。なんとなく想像がつきます(笑)。
岡村
デザイナーなら分かりますね。
フォントが大きくなれば伝えたい情報量を削っていかなくてはいけません。
「水を入れてください」と9文字入る限られたスペースが字を大きくしたことにより、例えば「水を」の2文字しか入らなくなると、行間を読みとってください、みたいな話になる。
それが、分かりにくさの原因につながっていくこともあります。
フォントが大きくなれば伝えたい情報量を削っていかなくてはいけません。
「水を入れてください」と9文字入る限られたスペースが字を大きくしたことにより、例えば「水を」の2文字しか入らなくなると、行間を読みとってください、みたいな話になる。
それが、分かりにくさの原因につながっていくこともあります。
長尾
似たような話ですが、制作依頼で「全部のメニューを目立たせたい」というものが稀にあります。
デザイナーとしては順番をある程度決めて折り合いをつけたいところなのですが「全部目立たせてほしい」となると収拾がつきません。
デザイナーとしては順番をある程度決めて折り合いをつけたいところなのですが「全部目立たせてほしい」となると収拾がつきません。
岡村
そういった時の対応はどうしていますか?
長尾
基本的にはクライアントの意向に沿ったものを作らなければいけないのですが、デザインで何を伝えるのかというのは大事なところであり理解していただきたいポイントでもあります。
メニューの読みやすさなのか、商品の説明なのか。
とにかく安さを打ち出したいのか。ヒアリングを重ねることを大事にしています。
メニューの読みやすさなのか、商品の説明なのか。
とにかく安さを打ち出したいのか。ヒアリングを重ねることを大事にしています。
岡村
「クライアントの要望を全部デザインに落とし込む」ことは難しいですね。
依頼通りに制作したのに、それによって弊害が生まれることもある。
例えば、20代前半のオシャレな女性や若いカップルがデートに使いたくなる店というコンセプトと高齢者の憩いの場になる店というコンセプトを両立させることは難しいですよね。
そもそものクライアントのコンセプトが何なのか?
相談に乗りつつ、ブレがでないように修正していくことも制作会社の役割だと思います。
依頼通りに制作したのに、それによって弊害が生まれることもある。
例えば、20代前半のオシャレな女性や若いカップルがデートに使いたくなる店というコンセプトと高齢者の憩いの場になる店というコンセプトを両立させることは難しいですよね。
そもそものクライアントのコンセプトが何なのか?
相談に乗りつつ、ブレがでないように修正していくことも制作会社の役割だと思います。
長尾
そこはデザイナーにしっかり相談していただきたいですね。
どのように考えていらっしゃるのか。
どのように考えていらっしゃるのか。
岡村
例えば、コロナ以前は、日本の観光業は海外からの観光客のおかげでかなり賑わっていました。
ホテルによっては、外国語対応のために外国人の従業員を雇ったり、 「日本らしさ」を演出する内装に変えたり、海外からの観光客をターゲットにした 取り組みを行って成果を出しているところもありました。
しかし結果、日本人の客離れを起こしてしまうこともありました。そうなると何かのきっかけで海外からの観光客が来なくなったら一大事になります。
どんなお客さまに、どのように楽しんでもらうのか?
その場しのぎで対応してしまうとコンセプトが崩壊してしまうこともあるので、長期的にサービスを設計していくことが重要だと思います。
ホテルによっては、外国語対応のために外国人の従業員を雇ったり、 「日本らしさ」を演出する内装に変えたり、海外からの観光客をターゲットにした 取り組みを行って成果を出しているところもありました。
しかし結果、日本人の客離れを起こしてしまうこともありました。そうなると何かのきっかけで海外からの観光客が来なくなったら一大事になります。
どんなお客さまに、どのように楽しんでもらうのか?
その場しのぎで対応してしまうとコンセプトが崩壊してしまうこともあるので、長期的にサービスを設計していくことが重要だと思います。
長尾
ニュースでも度々放送されていました。
特にウィルス問題の時の訪日客の大幅減少は観光地に大打撃という。
特にウィルス問題の時の訪日客の大幅減少は観光地に大打撃という。
岡村
想定外は大打撃になりますよね。
長尾
HiRASAWAの仕事でこんなことがありました。
少し内容を変えてお話しますが、海外の人気観光地のホテルにあるスイーツの店を日本のホテル内にも作ることになりました。
せっかく日本に作るので、日本人ウケするように作るのかなと考えていたのですが、そのままの姿で表現して良いと言われました。そこまでは理解しましたが、 現地の言語のままでも良いと言われました。日本語ですらないメニューということに驚きました。
ですがそこはコンセプトのお話ですので。
せっかく日本に作るので、日本人ウケするように作るのかなと考えていたのですが、そのままの姿で表現して良いと言われました。そこまでは理解しましたが、 現地の言語のままでも良いと言われました。日本語ですらないメニューということに驚きました。
ですがそこはコンセプトのお話ですので。
岡村
海外のホテルはブランディングに力を入れている企業が多い気がします。
ブランディングの基となるコンセプトがブレない。
しかし、コンセプトではなく、やり方も海外と全く同じにして、日本で展開すると、 想定していた結果がでないこともあります。
ブランディングの基となるコンセプトがブレない。
しかし、コンセプトではなく、やり方も海外と全く同じにして、日本で展開すると、 想定していた結果がでないこともあります。
長尾
何が誰に対してどうするのかという設計です。
食べ物ですと、HiRASAWAのフードグラフィック研究会の中で教えていただいたメニューの話を思い出します。
メニューは誰のために作るのか。印象的でした。
食べ物ですと、HiRASAWAのフードグラフィック研究会の中で教えていただいたメニューの話を思い出します。
メニューは誰のために作るのか。印象的でした。
岡村
おばあちゃんの原宿ともいわれ、高齢者に人気の巣鴨の話ですね。
ファストフードのポテト、ナゲット、シェイクなどは、高齢者にとってあまり馴染み深いものではありません。
しかし、メニュー表には、商品名と写真が載っているだけです。
ファストフードのポテト、ナゲット、シェイクなどは、高齢者にとってあまり馴染み深いものではありません。
しかし、メニュー表には、商品名と写真が載っているだけです。
長尾
大きなチェーン店なので、ほぼどの店も同じようなメニュー表ですよね。
岡村
数年前に巣鴨店に行った時は、ナゲットの横に「鶏肉の唐揚げ」と書いてあったり、 ポテトの横に「おいも」と補足情報が書いてありました。
L・M・Sという表示も「大・中・小」です。
L・M・Sという表示も「大・中・小」です。
長尾
高齢者のためだけと思われがちですが、そうではないと教えていただきました。
岡村
高齢者はナゲットが何か分からないから店員さんに聞く。店員さんが答える。
累計するとその説明は何百回かも。どんな食べ物か分からないから注文しない場合もありますよね。
累計するとその説明は何百回かも。どんな食べ物か分からないから注文しない場合もありますよね。
長尾
分からないけど勇気を出して注文したとしても想像と違う商品が出されたかもしれません。 それならば書いた方がいいですね。お互いのために。
岡村
合理的なものも含めてどこに照準を合わしていくかです。
実利用者に合わせる。それが「問題解決型のUD」です。
実利用者に合わせる。それが「問題解決型のUD」です。
長尾
大きい飲食チェーン店ですとエリアごとにメニューの価格や内容が違う場合が非常に多いです。
海外の人が多い地域では英語のメニューを追加で作ったりデザインを何パターンか変えて作ることも。
クライアントはしっかりと調査をされているのだなといつも思っています。
海外の人が多い地域では英語のメニューを追加で作ったりデザインを何パターンか変えて作ることも。
クライアントはしっかりと調査をされているのだなといつも思っています。